30周年記念として、イブニングで連載中の金田一少年の事件簿について、漫画と同時進行で推理・考察をしていきたいと思います。今回は、エピソード「墓獅子祭殺人事件」のFile.5についてです。
漫画を読んでいる方も読んでいない方も一緒に推理・考察できればと思います。
ネタバレの内容を含みますのでご注意ください。
講談社 イブニング 金田一少年の事件簿30th File15~19より引用しています。
YouTubeにも動画投稿していますので、チャンネル登録していただき、みなさんと一緒に考察できたら、とてもうれしいです。
殺害の順番
今回は、犯人やトリックに関わるような新たな情報は提示されなかったので、金田一がこだわった2つのポイントについて触れてみたいと思います。
1つ目は、白神と鬼倉の殺害された順番が明らかになった点です。最初に鬼倉、そのあと、白神でした。
ただ、白神に関しては、仕掛けられた針の毒によって殺害されているので、正確に言えば、針を仕掛けたのと、鬼倉が殺害されたのとどちらが先かということになります。
鬼倉は、音楽を止める時間を知るために、時計のタイマーを仕掛けていたということでした。まあ、これ自体、犯人が仕掛けた可能性もありますが、金田一的に疑っている様子もなかったので、舞の最中に鬼倉が殺害されたということでよいと思います。
殺害の順番が明確になったことで、ずっと座っていた鮫川には、2つの犯行は不可能だということが証明されました。
このことは、隣に座っていた、赤萩にも言えることだと思います。
しかし、他の容疑者に関しては、どちらが先だろうと重要な要素にはなり得ません。先に針を仕掛けてから鬼倉を殺害することも、鬼倉を殺害してから針を仕掛けることも、どちらも可能だということです。そういう意味では、どちらが先かという点は、読者的な観点からしても、あまり重要な要素にはなり得ません。
しかし、前回の考察で言った、相互殺害トリックが使われていた場合、とても重要な意味を成します。仮に、白神が先に殺害されたとしたら、鬼倉を殺害する人物がいなくなってしまいます。
白神が席を立った時に、鬼倉が椅子に針を仕掛ける。
鬼倉が音響室に戻った時に、席を立っていた白神が、鬼倉を殺害する。
席に戻った白神が、針の毒で殺害される。
この順番がとても重要なことで、今回、殺害された順番が明確化されたのは、このことを示唆するための物だったのではないでしょうか。
腕力では持ち上がらない
2つ目のポイントとしては、鮫川を火の見櫓の上に持ち上げる方法を検証している点です。
佐木が実験体となり、金田一と美雪で引っ張り上げようとしましたが、無理でした。細かい運動方程式は出しませんが、下から引っ張り上げることは不可能でしょう。
そうなると、前回の考察で言ったように、上から体重をかけて持ち上げる方法でしょうか。金獅子の重さ、20キロを加えれば可能な気がしますが、鮫川の体重が80キロぐらいだとすると、ちょっと微妙な感じもしてきました。つむぎ犯人説を唱えているので、つむぎの体重が50キロだとしても、金獅子と合わせて70キロ。足で反動を付ければなんとかなりそうな感じもするので、この方法が最有力だと思います。
ただ、下にいる鮫川を引っ張り上げるのは無理だということを、あえて検証までして見せていることから、逆の発想を示唆しているのかもしれません。それは、鮫川自身に、上まで上がってきてもらうということです。
梯子の手すり部分を見てみると、一番上の手すりに手がかかった時、ちょうど、頭だけが櫓の部分に突き出した状態になりそうな感じです。つまり、もぐらたたき状態ということです。
その瞬間、ロープを首に掛け、金獅子の重さを加えた犯人が、下に飛び降りれば、宙づり状態の完成です。その状態で殺害してしまえば、あとは、ロープの位置や向きを調整して、上から鮫川を落とすだけです。
前回も言ったように、つむぎであれば、墓獅子舞を踊るくらいなので、体幹や腕力はしっかりしていると思うので、こういった芸当も可能でしょう。逆に言えば、老人の庄吉や雨崎、女性の十海には、こうした犯行は難しくなってきます。
赤萩と宇治木は、自ら動機要素のネタバレをしている点から、何か違う感じがします。そういう意味でも、ますます、つむぎ一択になってきているようです。
早仕掛けな動機要素
今回、もう1つ 明らかになったのが、動機についての要素です。
5年前に起こった、吊り橋落下事件についてです。赤萩と宇治木の関係者が被害者ということが明らかになりましたが、おそらく、他の容疑者の中にも、この事故の被害者が関係している人物がいるのだと思います。つむぎの場合だと、両親といったところでしょうか。その辺については、まだわかりませんが、今回気になったのは、動機要素が語られるのが早いという点です。
本来の流れだと、事件の推理がひと通りまとまった後、後付け的に動機要素が明かされることが多いですが、なぜ今回は、前倒ししているのでしょう。動機が重要ということなのでしょうか。
金田一の推理の決め手となるのは、証拠やトリック、犯人のミス、失言などがあげられます。ただ、もし、相互殺害が行われていたとしたら、すでに2人は死亡しているため、こうした決め手となる要素が、皆無な状態に近いです。そこで、今回は、動機の観点から、犯人を追い詰めていくのではないでしょうか。今までにない新しい手法です。もちろん、鮫川の事件や、金獅子 消失の謎からも攻めていくのでしょうが、推理の前に動機要素を提示したのは、そういった、動機の重要性を強調したかったからなのかもしれません。
以上、「漫画【金田一少年の事件簿】「墓獅子祭殺人事件 File.5」金田一がこだわった2つのポイント」について考察してみました。
最初に触れた、殺害の順番についてですが、鬼倉の殺害現場のシーンでは、あの時計は描かれていませんでした。読者が殺害の順番を推理する意味でも、時計は最初から見せておいてもよかったのではないかと思います。あのシーンを描いた後に思いついた、後づけ要素なのかもしれません。
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